塵一粒

同人誌やイラストの感想とか雑記とか。同人感想は作者さん向け。

【感想】雨に酔う【ハイカラ数寄屋】

『雨に酔う』

第七回東方想七日(2019年夏)発行。

 

f:id:rate-sto:20190929034157j:plain

 ザコザコYさん(ザコザコY (@zakozakoY) | Twitter)のルーミアちゃんと蛮鬼ちゃんの本です。
 表紙は番傘を差し、蛮鬼ちゃんの頭を抱えるルーミアちゃん。蛮鬼ちゃんのどことなく潤んだ視線、というか表情が良いですね。そしてザコザコさんアイコンの「大丈夫」って、見た目通り頭の上に文字が立ってるんですね。

 

 

 感想に入る前に、こちらを紹介しましょう。『雨に酔う』の前日談となるお話です。ツイッターでザコザコさんがふらっと言っていたので買ってみた。蛮鬼ちゃんが姿を現すシーン迫力あるので本で欲しかった(叶わぬ願い)。

zakozakoy.booth.pm

 

 本題。

 いきなりあとがきに言及するのもアレですが、「登場人物にしか知りえない前提があって、その上で説明もなくつらつらと」雰囲気を楽しむお話、とても好きです。作品によっては不親切な要素ですが、まったり眺めるのがベストな今作では引っかかることもなく読めました。 幻想郷における妖怪の在り方というのを自然に演出として使っている、「彼女らの間ではこれが常識なんだな」というのがすっと入ってくる。そういう違和感のなさが読みやすい。

 また、人里妖怪の蛮鬼ちゃんと野良妖怪のルーミアちゃんの感覚の差が面白いです。人里で暮らす上で気を遣うことの多い蛮鬼ちゃんに対し、ルーミアちゃんが窮屈そうに感じたり「惨めだ」という感想を抱いたりするのを見て「なるほど、この子はこういう子なんだ」となる。作者の持つキャラクター観や世界観がしっかりしているからこそ、こういう味付けができると思うのです。

 それと絵に関する知識や用語はさっぱりなので、いつも感覚であれすきこれすき言ってますが、今回特に絵の奥行き凄いように感じます。蕎麦屋での机や椅子の位置や、みすちーの屋台など、遠近感を意識した構図が多いような。ザコザコさんの絵は顔や服の影……光の使い方? が印象的なので、なおのこと場面が立体的。

 

 前日談『雨と妖』で、マイペースなルーミアちゃんに不覚にもドキドキしてしまった蛮鬼ちゃん。今作でもしっかり者のお姉さんでありながらルーミアちゃんを意識している描写が随所にあって、非常によろしいですねぇ。最初のぼけーっと空を眺めるのも可愛い。着物に不服なルーミアちゃんへの「いい加減慣れて」という台詞や、文ちゃんの取材ネタから、あの後度々蛮鬼ちゃんの家にルーミアちゃんが押しかけているのがわかって捗ります。

 

 文ちゃんに関係を聞かれた時の二人の反応可愛い。今は特別な関係という訳でもないのに、焦ってボロを出すのがここの蛮鬼ちゃんらしいというか。結構うぶなところある。忠告する文ちゃんの「やれやれ」という顔も好きです。ゴシップ好みな記者も、そこまで下世話じゃないのがいいキャラしてますね。

 

 人間から隠れるとき、抱き寄せられたルーミアちゃんの照れ隠しがめっちゃ可愛いですね…。顔真っ赤なのは読者にしか見えてないので、二人のやりとりにニヤニヤしてしまう。

 ルーばんが向き合った時が顕著ですが、他にも文ちゃんが話しかける時に少しかがんだり、みすちーの屋台のシーンだったり、ルーミアちゃんの小ささが目立ちますね。そんな二人の身長差を印象付けてからの、蛮鬼ちゃんをぐっと引き寄せてのラストシーンが映えます。あー身長差すき。

 

 雨の閉塞的な空気の中の、更に傘の下という狭い個室で寄り添って。しとしと濡れたルーミアちゃんを大胆にするには十分でしたね。

 とても素敵なルー蛮でした。ありがとございます。

 

 

 糸引いてるのすき(ボソッ