【感想】吸血鬼のフラスコ【ハイカラ数奇屋】
『吸血鬼のフラスコ』
東方紅楼夢14(2018年秋)発行。
ザコザコYさんのフランちゃん本、というよりスカーレット姉妹のお話ですね。読後、傑作かよ…と呟いてしまった。表紙の咲夜さんが可愛い。
冒頭の誕生日会からあざと可愛いフランちゃん。そして「私の妹可愛すぎるわー」とか言ってるお姉さま。こんなスカーレット姉妹が見られるとは。ザコザコさんのイラストは以前から好きでしたが、最近更に好き。
しかし物語が進むにつれ、フランちゃんの正体が不穏なことに。後半、フランちゃんが力を使う時のコマの枠の激しさが良いですねぇ。勢いが凄く良いです。「吸血鬼じゃないよね」のコマ枠も、フランちゃんの気が立ってきているのと、危険な力が漏れ出しているのを同時に表現している。とても好きです。
最後にはフランちゃんは消滅して(元居た世界に還って)しまいます。妹を大事にするあまり真実を伝えられず、失ってしまう。本当のことを伝えていれば、結果は変わったのだろうかと考えてしまいます。
最初の回想。「今日から私が当主だ」の台詞で、レミリアが両親に不遜な態度を取っていたかのように見えます。しかしその前の「弱いのね」のコマで堪えるように握りこぶしを作っているのが、辛いけど強がっている、当主としてしっかりしなければという気持ちの表れなのかなとも思えます。十字架の前で、彼女はどんな顔をしていたのでしょうか。
そこへ現れた一人の天使(比喩ではない)。孤独になったと思われたレミリアに両親が遺してくれた、唯一の家族。レミリアが溺愛するのも無理はないでしょう。
キャラクターとしてはレミリアの、一人の少女としての弱さが非常に魅力的でした。秘密がバレて鏡の前で動揺する姿や、涙を浮かべて友人に「どうしよう」と問う姿に紅魔館当主の威厳ある面影はなく……。
以前からもザコザコさんの本ではフランちゃんに苦悩するレミリアが描かれていましたが、今回は冒頭の平和な誕生日会のこともあり、いっそう妹のことが大好きで大切なお姉さんという面が強調されていたように見えます。だからこそこの結末は痛ましく、愛おしい。なんというか、いい余韻ですね……。
さて、あとがきも意味深でしたね。鍵……鍵?
「逆位置」で真っ先に連想するものはタロットでしょうか。にわか調べですが、今回の場合は「悪魔」が適切? そして「悪魔」の逆位置の意味は「解放」。フラスコから解放されるフランちゃん……では安直か。
そもそもタロットが正解かも不明なのですが。どこかで答え合わせが欲しい。
前回の本も好きでしたが、今回も非常に楽しめました。ありがとうございました。フランちゃんまじ天使。
あ、製本はばっちりだったのでご心配なくですよ。