塵一粒

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【感想】天紫音【手遅れ堂】

『天紫音』

上巻 コミックマーケット94(2018年夏)発行。

下巻 コミックマーケット95(2018年冬)発行。

 

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 手負いさんの天子・紫苑ちゃん本です。上下巻で表紙が対になっているのが良いですね。手負いさんは息もつかせぬギャグ本の印象が強いですが、今回は導入こそコメディなものの真面目な内容になっています。それがまた良い。

 

 個人的な話、東方に紫苑ちゃんが登場した時「あっ、好き…」となり、それに釣られて天子×紫苑ちゃんの本を複数頂いたのですが、その相性の良さに天子まで自分の中の好感度爆上げとなりました。中でも手負いさんの『TENSION!!』は好き好き開拓の筆頭です。てんしおんはいいぞ。

 

『天紫音 上』

 表紙は困惑気味な紫苑ちゃんと、デフォルメ天子+紫さん。でかリボンポニテはやっぱり可愛い。

 緋想の剣取られた天子が早速雑草食べてるのが笑えます。「なかなか美味しいわよ」じゃないよ、なんで草食べるのが当然みたいな顔してるんですか。天井の板が落ちてきた後、天子の頭をさすってあげる紫苑ちゃん可愛い。

 その後見捨てられないよう天子に尽くす紫苑ちゃんですが、ここの空回りがギャグシーンながら切ない。例え相手が自信の塊である天子だろうと、いや天子だからこそ不安に駆られて仕方ないのでしょう。他の誰に見限られても「貧乏神だから仕方ない」で済ませそうな紫苑ちゃんが必死に繋ぎとめようとする程、天子は特別なんですねぇ。

 ぼろ布団で並んで寝る二人がンンッッってなる。寝間着の半そでシャツ姿の天子可愛い。

 

 そして天子の頼みにより、紫&霊夢ペアに挑む紫苑ちゃん(絶望)。デコピンくらう顔がめちゃ可愛いです。

 勝たせることなどできないと、天子への憑依を拒否する紫苑ちゃんに喝を入れる天子ちゃんがイケメンすぎますね。大きすぎる器と、直接的で力強い言葉。不安を消し飛ばされた紫苑ちゃんが、それに全力で応えようとするのが最高に熱いです。そして紫苑ちゃんより天子の方が背が低いのがもう無理しんどい…(身長差フェチ)。

 なお、ギャグ時空により戦闘描写カット(もしくは瞬殺)で負けた模様。そして物語は下巻へ。

 

 霊夢さんの吹き出し台詞「は?」しかないの草。

 

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『天紫音 下』

 表紙はどこか不安げな天子と依神姉妹。

 緋想の剣を返してもらった代わりに、倒してもらいたい相手がいると紫様に頼まれた天紫苑ペア。向かった夢の世界で出逢ったのは女苑ちゃんの夢人格。「夢人格はその人の本音を大げさにした性格」ということで一触即発な雰囲気は免れますが、高飛車な女苑ちゃんも姉に嫌われていないか泣くほど不安だったと思うと可愛い。

 

 次に出会ったのは本命である天子の夢人格。世界を滅ぼし理想郷を作ろうとする夢天子の言葉に、天子は斬りかかります。

 心深くに隠した本音というのは当然誰かに見られたくないもの。その多くは後ろめたいことや不安などの弱み、ネガティブな感情ではないでしょうか。それを容赦なく、それも自分を慕ってくれる紫苑ちゃんの前で突きつけられるのは、自尊心の高い天子には拷問でしょう。上巻で見せた自信とは裏腹に動揺する様、そして夢天子のぶつける本音になんとも言えない気持ちになります。バトルの描写もさながら、涙を浮かべて緋想の剣を振るう夢天子が良い絵ですね…。

 しかしそんな天子の本音は知っていた紫苑ちゃん。天子も紫苑ちゃんもこの世界が大嫌いで、でも互いに受け入れ合うことで世界に希望を見出した。天子の本音が回りまわって天子自身を救うことになったのが、非常にエモいですね…。夢天子の手にそっと手を添える紫苑ちゃんの優しい表情がたまらんです。

 

 オチ担当は紫さま。隠した本音もこんな可愛げのあるものなら安心ですね。

 

 

 天子と紫苑ちゃん、正反対のようで共通するのは「どうせ自分は受け入れてもらえない」という思い。そしてお互いのそれに向けた「あなただから必要なんだ」という言葉。世界は自分たちに優しくないかもしれないけれど、その中の一人でも自分の存在を認めてくれて、必要としてくれる。その事実は二人に何よりの自信を植えつけるでしょう。

 夢人格の話の辺りはぐさぐさと刺さる部分もあり、それを乗り越える二人にぐっと来たりもしました。素晴らしいお話をありがとうございます。全く、てんしおんは最高だぜ。