塵一粒

同人誌の感想とか書きますん

【感想】~you~ (前編『幽』・後編『悠』)【K.T.from Leaf】

『幽 ~you~』

コミックマーケット92(2017年夏)発行。

『悠 ~you~』

コミックマーケット93(2017年冬)発行。

 秋乃楓さん・とめさんの響子ちゃん本の感想です。この2冊を出した時のサークル名は「落ち葉」だったのですが、記事タイトルには敢えて現サークル名を。

 

  サークル【K.T.from Leaf】さん。後編『悠』を出した冬コミの後に今のサークル名にされたのですが、その時のなんやかんやでこのサークルさんを知ることができました。

 フォロワーさんのRTでその件が流れてきたときは「なんか知らないサークルさんが…」くらいの認識でした。しかし一緒にRTされた楓さんの「冬コミの本は見てほしい」という呟きに、それじゃいっちょ買ってみるかとboothへ向かいました。もちろん、イラストを拝見して「好きな絵柄だなー」と思ったからでもありますが。ここのマッチング大事。今では立派なファンです。

 

『幽 ~you~』

 表紙はワンピース姿な響子ちゃん。涼し気で可愛いのですが、その耳と尻尾はチェック柄のシルエットになっています。シルエットというのがポイントなんですねぇ。

 響子ちゃん(京子ちゃん)が山彦の妖怪になった経緯の物語ということですが、こういうお話大好きです。東方キャラの過去って二次創作のしがいがありますよね。妖怪という恐れられる存在故シリアスな話になることも少なくないですが、そこはシナリオライターの腕の見せ所。ボリュームもあって非常に満足でした。

 前半の響子ちゃんはひたすら無邪気で可愛いです。山彦を返す時の顔めっちゃ好き。体の弱いお姉さんを健気に支えるしっかり者でもあります。あとがきで「バストサイズ大きめ」と言われてますが、この服装えろくないですか。

 後半はうってかわって悲惨なことに。しかし実際問題、飢饉の原因は本当に響子ちゃんだったのでしょうか。不安定な人の心がただの人間を妖怪にしたのと同じく、原因を少しでも心当たりのあるものに結び付けてしまったように見えます。番傘の妖怪さんは少し煽っただけ、いやそもそも妖怪さんが本当に存在したのかも……。そしてこの場面、水たまりに反射した響子ちゃんの着物が左前になってるのがぞっとする。

 打ち棄てられたお姉さんの遺体も痛々しい。あとがきではとめさんが「今後は明るい話を書きたい」と言っているので、きっと後編は明るいお話ですね……。 

 

『悠 ~you~』

 もっとつらかった。でもその分、力強い救いがありました。

 故郷のために妖怪として村を離れたのに村は滅び、新たにお世話になった村の人たちのために神様を演じたのにやっぱりそこも滅茶苦茶になって、子供の響子ちゃんにはハードモードすぎる境遇ですね。影狼ちゃんがいなかったらどうなっていたか。

 「私は私の為だけに生きてる」のコマの影狼ちゃんかっこいいですねぇ。表情がとても好き。しかし一方で響子ちゃんの指摘にもある通り、響子ちゃんを気にかける一面もあります。根が優しいんですね。影狼ちゃんに何があったかは語られませんでしたが、逆にそれがすっきりした話運びに。

 山彦というのは、叫んでくれる人がいないと成り立たないんですよね。「誰かの為に生きたかった」という響子ちゃんの台詞は、まさに山彦が言いそうなことだなぁと思いました。そして妖怪のはずなのに、人間としても至って普通な社会的欲求のように見えますね。元々の山彦という自然現象を微塵も出さず、しかししっかりテーマに据えているのが凄い。

 依存と言うと聞こえは悪いですが、支えあう友達ができて、ようやく何者かに、『幽谷響子』になれた。キャラクターの過去話としては素晴らしい締め方だと思います。

 

 

 楓さんの描く、キャラクターの生き生きした表情が本当に好きです。悪戯をして無邪気に笑う顔も、人を食らうモノを見て逃げる時の必死な顔も、耳と尻尾と牙の生えた自分に慄くような悲しむような顔も、影狼ちゃんに想いを吐き出す一連の表情も、どれもとても魅力的。

 シリアスですが無駄に暗いわけではなく、響子ちゃんの可愛さを交えながら読み応えある物語に仕立てていて、とても面白かったです。